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海外で活躍していたモデルに羨ましがられる要素なんて持ち合わせていないからこそ、恋愛ひとつに苦労しているのに。
「甘いデザインの服、繊細なレース、淡い花柄、栗色の髪、ふわふわした女の子らしい要素たっぷり。どれもこれも似合わないのよあたしには」
いつも隣の芝生ばかり青々としているのだと思っていた。
無い物ねだりだと諦めて、人から羨ましがられるものを持っていた事に気付かずにいた。
「……私、凪さんのこと、ちゃんと好きになれると思います」
確かに昨日までは心底嫌いだった。
ただ、何も知らなかったからだ。
彼女の派手な外見に隠れてしまった優しさにも。
「嬉しい、あたし女の子の友達いないの」
「実は私も。本音で話せる友達いないんです」
上っ面ばかり気にしてきた今日までの自分に区切りをつけて、明日からはもう少し凪のように女を正々堂々と生きたいと、思った。
「世の中の、見る目のない男どもに」
強気に凪がにやりと笑って、葛西もピンクのグロスで微笑する。
怜太郎が注いだ赤ワインのグラスを二人は軽やかに鳴らした。
「なでしこ達の憂鬱」END
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