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気が付くと、玉藻神社の前まで来ていた。玉藻神社・・・・・・。赤い鳥居と、小さな祠。この街の名前が付いてる割には小さい祠だなってよく思ったものだ。子供の頃、恵吾と良く一緒に夕方近くまで、ここで遊んでたなあ・・・・・。恵吾はよく、転んで泣いてたわたしを、おぶって、連れて帰ってくれたっけ。そう考えていたら、今まで怒っていた気持ちが馬鹿らしくなってきた。(わたしって、馬鹿だ・・・・。勝手に嫉妬して、勝手に怒って、恵吾を困らせてる。わたしって、ほんっとに自分勝手で最低!)
「真琴!」
うしろから、恵吾の声がして振り返る。
「恵吾・・・・・・」
恵吾が追いかけてくれたようだ。
「真琴、どうしたんだよ・・・・、急に」
「ごめん・・・」
「俺は別に、いいけどよ」
恵吾の顔を見るのがなんだか恥ずかしくて、俯いたまま聞いた。
「柚季は?」
「先に帰ったよ、心配してた」
「そっか。あとで、ラインしなきゃ」
恵吾がなにげなく、玉藻神社を見ているのに気付いた。
「玉藻神社か。昔よく遊んでたっけな」
「そうだね、夕方近くまで遊んでたら、よくおこられたね」
「そうだったな。そういや、一度、夕方に御神木に行ってみようって俺が云った時、お前、いやだ、怖いって、大泣きしたことがあったよな」
「そうだったかなぁ。つまらないこと、覚えてるね」
少し、恥ずかしいことを云われて、唇を尖らせる。
「忘れるわけないだろ。結局やめたけど、あのあと、そのことが親父にばれて、死ぬほどぶん殴られたんだから。女の子を泣かすんじゃないって」
「そうだったんだ、知らなかったぁ。でも、恵吾のお父さん、わたしにはすごく優しかったから、ちょっと想像できないな」
「親父のヤツ、女の子には、アマアマだったからな。姉貴にも甘かったし」
恵吾には十歳年の離れたお姉さんがいる。今、そのお姉さんは伝丹市のK**大学の大学院で、民俗学の研究をしていのだそうだ。
「そういえば、いつも一緒に遊んでた女の子いたよね。あのコなんて名前だったけ?」
「女の子?いたっけ、そんなコ?」
恵吾が訝しげな顔をする。
「いたじゃん。いつもここに来たらオカッパ頭で、着物姿の女の子がいて、いつもそのコを入れて三人で遊んでたじゃない?」
「変なこと云うなよ。いつもお前と俺の二人たったじゃないか。しっかりしてくれよ。ボケるのは、まだ早いぜ」
恵吾は笑いながらわたしの頭をくしゃくしゃに撫でる。
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