第1章

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結局、他の二科目も問題集をもらっただけで、夏休み中、補習を受けなくて済んだ。あ~よかった・・・・・。でも、宿題があるから、けっこう大変だ。夏休みが終わったあと、文化祭で、文芸部は文集を販売する予定だ。それに載せるための小説も書かないといけない・・・・。あ~憂うつだ。宿題は恵吾に教えてもらおっかな・・・・・。などと考えながら、教室に帰る途中、廊下で恵吾と柚季が話しをしているのを見かけた。なにを話してるんだろう?ま、まさか・・・・・・・。わたしは見てはならなものを見た気がして、咄嗟に廊下の曲がり角に隠れた。二人はなんだか楽しそうに話しをしていた。その二人の姿を見ていると、わたし一人取り残されたような気持ちになる。なんだか胸が苦しい。切なくて苦しいよ・・・・・・。      6 部活の時間、図書室の窓際に五台設置されている、デスクトップパソコンの前に座っていた。昼間のことが気になって、パソコンのキーボードを叩く気にはなれず、ただ、ボーっと窓から外を眺めていた。グランドでは野球部やサッカー部が練習している。無意識のうちにサッカー部の部員たちを目で追って、恵吾を探してしまう。柚季は恵吾に告白したんだろうか?それに恵吾はOKしたのかな?そう考えながら、柚季の方を見る。柚季はいつもと変わらない様子で他の部員と談笑している。なんだかちょっと嬉しそうにも見える。帰りに聞いてみようかと思うけれど、聞くのが怖くもある。もし、恵吾と・・・・、なんて考えると、でも柚季は友達だし、もしそうなっても、嫌いにはなれない。でも・・・・・。そんなことを考えてた、ちょうどその時、早河先輩が心配そうな声で話しかけてきた。 「どうしたの?姫川さん」 「あ、早河先輩」 早河先輩が横の空いている席に座りながら、訊いてきた。 「元気ないけど、どうしたの?」 「・・・・・・・・」 早河先輩の問いに黙って俯くしか出来なかった。 「無理には訊かないけど、あなたらしくないわよ」 早河先輩のその言葉に思わず頭に血が上り、睨むような目で早川先輩を見て、云った。 「わたしらしいって、なんですか?いつもヘラヘラしてろってことですか!」 早河先輩の驚いた顔とまわりの部員が一斉に目をむけてきたことで、はっと我に還った。 「ご、ごめんなさい、早河先輩、本当にごめんなさい!」
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