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「えっ、今から?」
「ああ。あーもしかして、怖いのか?」
「ううん!全然!いこ!」
バカにしたように云われてムッとして云った。
玉藻神社は祭りのあとのようで所々にまだ、露店の機材が残っていた。
お祭りあったんだ。さっきのはやっぱり夢じゃなかったんだ。
境内の裏に回り、御神木の方へ向う。暗闇の中、スマホのライトをたよりに砂利道を踏みしめた。
こんな深夜にもかかわらず不思議と怖くなかった。
「玉藻様ー」
御神木の前に着くと恵吾が呼びかけた。
「おう、なんだこんな、遅くに」
玉藻様が墓神木の中からス~と出て来た。普段なら背筋が冷たくなるシチュエーションだ。
「悪い、このバカが真相を早く話せってせっついてさ」
「誰がバカだ」
わたしは恵吾を睨んだ。
「ねえ、玉藻様、どうなってんの?わたし、確かに神隠しにあったよね?それに・・・・」
わたしはそこで口ごもった。柚季に刺されたことを口に出すのが躊躇われたからだ。
「柚季とやらに刺された、と」
「そう、やっぱり夢じゃなかったのね」
「そうじゃのう、確かにお前は一度死んだのじゃ」
「わたしは一体どうなったの?なんで生き還ることが出来たの?!」
「お前にも真実を話してやるか。まず、わしは玉藻ではない」
「え?ええ?!」
わたしはのけ反るほど驚いた。恵吾を見ると平然としていた。既に知っていたのか。
「え、じゃあ、え?」
「わしは玉藻の影。まあ、わかりやすくいうと分身じゃ。気付かんかったか?わしは平然と外をうろうろしてたじゃろ」
「だって、あれは分身だって・・・・」
「あれは、わし」
また、頭を抱えた。どういうこと?
「本物に出てきてもらうか。玉藻様」
御神木の中から出てきた人を見てまたのけ反ってしまった。
長い髪、色白の肌、白いワンピース。
まさにその人は、
「お母さん?!」
そう、今までお母さんと呼んでいた人、少なくともここ最近、お母さんだったその人だった。
「黙っててごめんなさいね」
と、かつてお母さんだった、本物の玉藻様が優しくわたしに笑いかけた。
「まず、真琴ちゃんに謝らないといけないわね」
「謝る?」
わたしはおかあ、・・・・玉藻様の言葉に首を傾げる。
「そう、5年前のこと、云い訳になるけれど、わたしはてっきり、恵吾くんにチョコレートを渡すものと思ってたから・・・・」
玉藻様の言葉におぼろげだった記憶が鮮明になってくるのを感じた。
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