第1章

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早河先輩は怒るどころか、わたしに優しく微笑みかけると、穏やかな口調で云った。 「気にしなくていいのよ。なにか辛いことでもあったの?良かったら話してみてくれる?」 早河先輩の優しい言葉にわたしは今まで張りつめていたものが切れ、涙が溢れて止まらなくなって、目の前にいる先輩の姿が、歪んで見えた。 「ご、ごめんなさい・・・・・や、やだ・・・・とまらな・・・・・・・・ごめ・・・・・」 嗚咽で声が出なくなった。もう、自分でも止まらなくなる。 「良いのよ」 早河先輩は優しく肩を抱いてくれた。 「安田先生、ちょっと出てきます。ここじゃなんだから、行きましょ姫川さん、立てる?」 早河先輩は文芸部の顧問の安田先生に断って、わたしを促して立たしてくれた。安田先生は何かを察してくれた様子で、黙って頷いてくれたようだった。そのまま、二人で図書室を出て、北棟に向かう。 北棟の学食の前にある自動販売機に着くと、その前にあるベンチにわたしと早河先輩と座った。早河先輩はしばらく、わたしの肩を抱いて泣き止むまで黙って待ってくれた。やがてわたしが泣き止むと、おもむろにポケットティッシュを出してわたしてくれる。 「もう、スッキリした?洟が出てるわよ。拭いたら」 ポケットティッシュを受け取ると、自分のスマホを自撮りモードにして、顔を見た。 「やだ、ほんとだ・・・・・。恥ずかしい・・・目も赤くなってる」 ホントだ、洟が出て、目も赤く充血してるし、瞼も少し腫れてる。ティッシュで洟をかむ。そして、未使用のポケットティッシュを早河先輩に返そうとする。 「ありがとうございます」 「あげるわ。持ってなさい」 「すみません・・・・」 「はい」 早河先輩はわたしに缶入りのレモンティーを渡してくれる。 「いただきます」 受け取った。先輩がプルタブを開けて、一口飲むのを確認してから自分も開けて、一口啜る。それを見てから、早河先輩は静かにわたしの横に腰をおろしてから、口を開いた。 「訊かせてくれる?」 そう云って、先輩は自分のレモンティーに口を付けた。 「・・・・・はい」 わたしは今までの不安だったことを全部話した。 「そうだったんだ。でも、以外ね、あなたがそんなに悩むなんて」 「え」 早河先輩の言葉に顔を上げる。 「姫川さんって、なんでも前向で積極的なのかと思ってたけれど、恋愛に関してはそうじゃなかったのねえ。ちょっと、意外」 「そう・・・・ですか?」
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