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照り返す夏の日差しが降り注ぐ朝、わたしは街路樹の立ち並ぶ、並木道を学校へ向かい、歩いていた。暑いけれど日差しが気持ちいい、なんだか爽やかな気持ちになって、足取りが軽くなる。通学の道は同じ学校の生徒。その中、見覚えのある、後ろ姿に声を掛けた。
「お早うございます、早河先輩!」
「お早う、姫川さん」
早河先輩は駆け寄り横に並ぶわたしに声を掛けてくれる。早河玲子、同じ文芸部の先輩で、二年生、部長でもある。成績は学校ではトップクラス、顔は美人で髪は肩までのセミロング、性格は良く、物静かでおっとりしていてので、男子にも女子にも人気がある。
「姫川さん、文集に載せる作品、もう決まった?」
「あ、はい・・・、恋愛小説にしようかと・・。」
「そう。楽しみにしてるわ」
早河先輩は微笑みかけながら云う。
「はい、ありがとうございます。早河先輩は何を書くんですか?」
「わたしはミステリ小説にしようかと、思ってるの」
「へえ、すごいですね、どんな内容ですか?」
「それはないしょ。でも、タイトルだけおしえてあげる」
「なんて、タイトルですか?」
「タイトルはねえ、『オフィーリアは鮮血の涙を流す』よ」「・・・・・鮮血って何かすごいタイトルですね・・・・」
「そう?」
早河先輩はあっけらかんと答える。先輩はミステリファンでもあるけど、ホラーマニアでもある。だから、グロいのもわりと平気なのだ。
「それで、・・・あのう、オフィーリアって誰ですか?」
「シェークスピアの『ハムレット』に出てくる、悲劇の王女の名前よ。姫川さん、知らないの?」
「すみません。でも、早河先輩!さすがよく知ってますね!痛!」
その時、突然うしろから、頭を平手で叩かれた。
「よう!真琴!おはよ!」
「いった~い、もう!なにすんのよ!」
後頭部を擦りながら、後ろをふりかえって睨む。163センチのわたしよりも、頭一つ分背の高い、男子生徒が笑顔で見下ろしている。わたしの幼馴染の高杉恵吾である。短く整えた髪形に、ジャ二―ズ系のイケメンで性格は明るいヤツだ。小さい時から、いつも一緒に遊んでいるので、わたしのことを女扱いしていない、まったく・・・・。ちなみにクラスは、わたしは3組で、恵吾は1組だ。
「お早う高杉くん」
「お早うございます、早河先輩!」
「二人は相変わらず仲良いのね」
早河先輩は微笑みながらわたし達に云った。
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