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「前って、それは、小さいの頃の話じゃない!恥ずかしいから、イ・ヤ!」
そう云って舌出す。まったく・・・、何十年も前のことじゃない!わたしは心の中で突っ込んだ。
「なんだよ。もう・・・」
恵吾はふてくされて、去って行った。
「真琴、羨ましいな」
柚季が微笑みながら、云った。その言葉にわたしは、思わずきょとんとして聞いた。
「なにが?」
「だって、真琴と恵吾くん、すごく仲良いんだもん。だから、羨ましいなって思って」
「そう?小さい頃からの、腐れ縁なだけよ」
なんだか、少し照れくさくなって、なんでもないように云った。早河先輩といい、柚季といい、やっぱり、そう見えるのかな・・・・。まっ、それはそれで、うれしいけど。
紙パックのいちごミルクのストローを齧りながらなんとなく、恵吾を目で、追っていた。その時、柚季が唐突に、
「ねえ、恵吾くんって好きな人、いるのかな?」
と、云ってきた。
「え?」
予想もしていなかった、質問に驚いてストローをくわえたまま、固まってしまった。なんでそんなこと、聞くんだろう、わたしに・・・・・・。我ながら、莫迦なことを考えていた。そんなことを聞くってことは決まってる、一つしかない。
「ねえ、真琴知らないの?」
「う、うん知らない。恵吾とそんな話し、したことないし」
「そっかあ、じゃあ、直接、聞いて見ようかな」
「でも、恵吾って、デリカシーないし、気も利かないし、性格も最悪だし・・・。」
「わたしはそうは思わないけどな。真琴、食べる?」
柚季は箱入りのチョコレートをわたしに差し出した。チョコレートを見たわたしは急に気分が悪くなった。わたしはチョコレートが苦手なのだ。甘いものは大好きだけど、チョコだけはなぜか、ダメなのだ。
「柚季、ゴメン・・・」
「あっ、そうだったっけ、わたしこそ、ゴメンね、真琴、チョコ、苦手だもんね。ひょっとして、カカオアレルギー?」
「わたしもよくわからないんだ」
なぜだろう?わたしにもよく、わからない。
4
放課後、部室として使っている図書室に行こうと北棟と南棟をつなぐ連絡通路に向かおうとすると、柚季が呼び止める。
「真琴、今日から、期末が終わるまで、部活、休みじゃん、忘れたの?」
わたしははっとして、立ち止まる。
「そうだったっけ?ごめん、忘れてた」
「もう、しっかりしてよね」
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