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完璧な人間なんて、この世にいない。
どんなに容姿端麗でも、頭脳明晰でも、スポーツ万能でも、万人に愛されていても、
かならず、どこかに綻びはあるもので。
けれど、完璧を目指す人がいる。
綻びを隠して、ただ完璧を追い求める。
一体、彼にとって何がゴールなのか。
私には到底、わからない。と、思う。
そこでペンを止め、ちひろはノートから顔を上げた。
集中を経たれた原因を見て、小さく苦笑する。
窓際では、クラスメイトの女子が集まって黄色い声を上げていた。
窓の外を覗き込み、嬉々とした小さな悲鳴をあげている。
教室にいる男子達は、そんな彼女達の騒ぎように呆れた様子だった。
窓の外に何があるのか、ちひろは無駄な予想などしなかった。
彼女達の黄色い声援の先など、考えなくてもわかる。
それでも、ちひろは立ち上がって窓際へ足を向けた。
彼女達と同じように窓の下を除き込む。
偶然隣にいた友人の加菜恵がうっとりとして言った。
「朝から月城様に会えるなんて今日は本当についてる」
そばかすがちりばめられた頬が赤く染まっている。
ちひろはそれを微笑ましく眺めた後、また窓の下を覗き込んだ。
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