第2話

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だが、悠平は納得しなかった。 呆然とするちひろの腕を引き、バスの中へ乗り込もうとする瑞樹を慌ててひき止める。 「待って、ちひろちゃんは俺が……」 瑞樹はバスの中へちひろを押し込むと、扉を塞ぐように立って悠平に言った。 「この人と近所だから、心配しないで俺に任せて。ついでで悪いんだけど、守口さんを送ってあげてくれるかな」 瑞樹がニッコリと微笑む。 悠平が呆気にとられる中、バスの扉が音を立てながら閉まった。 「こ、こここここれは一体どういう……?」 瑞稀に強引に手を引かれ、ちひろはバスの座席に押し込められた。 隣に座った瑞樹を困惑しながら見ると、先程の王子様な笑顔は消え、いつもの不機嫌な顔がそこにはあった。 「お前さ、あの男何なんだよ。まさか彼氏とかじゃないだろうな」 「ち、ちちちちちちがうよ!そんなんじゃないよ!」 「じゃあなんだよ。好きな男か?」 「ち、…………わ、わからないけど、どうして、そんな事聞くの?」 瑞樹は当然、とでも言うように、キッパリと言った。 「好きになるのは勝手だけど、彼氏を作るのは別だ」 「………へ?」 「昨日、お前だって言ってただろ。彼氏が出来たら秘密がバレるかもしれないし、都合が悪くないかって」 「……ハッ!」 ちひろは絶望する。 「今までお前に男っ気なかったから考えなかったんだけど、それ聞いて俺もよく考えたんだよ。ちひろに彼氏が出来たら、睡眠障害でお前に世話させるのもそいつに気が引けるし、理解してもらうのも難しいだろうなって。なにより、お前が彼氏に隠し通せるとは思えない。色々つめが甘いからな」 「………えーっと…?」 「俺だって、守口がもしお前と同じ立場にいたら、全力でその男を殴り飛ばして世話させないように監視する。一応俺も人の子だ、お前の彼氏に罪悪感くらい持つ」 「………つまり、私に彼氏が出来るのはダメってこと……?」 恐る恐る聞くと、瑞樹は実に清々しく頷いた。 「あぁ、彼氏はだめだ」 (こ、この人、私と櫻君の仲を妨害する為にこんな行動に出たんだ……!) 頭が痛くなり、ちひろは「うぅ……」と頭を抱えた。
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