第2話

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「何も一生とは言ってないからな。高校卒業したらお前の役目も終わるし、好きなだけ男を作ればいいよ」 「か、勝手な事言ってくれるね。なんで、そんな事まで言うこと聞かないといけないの?」 「なんだよ。今まで男に興味なかったのに、急に彼氏が欲しくなったのか?」 人懐っこく笑う悠平の顔が頭に浮かび、また赤面してしまう。 「ち、違うけど、そりゃ、その、好意を持ってくれる人が現れたら、悪い気はしないし、それに、いい人なら、ま、前向きに考えてもいいかなって、思うでしょ……?」 「ふーん」と瑞樹は目を細める。 「つまりあれだ、お前はまだ好きかわからないけど、あの悠平って男に好かれてる訳だ」 ちひろはまた絶望する。 「そ、そこまで言ってないよ!」 「言わなくてもお前は全部バレバレなんだよ」 ちひろはわなわなとしながら言った。 「み、みみみ瑞樹君、頼むから余計な真似はしないで……」 「さぁーね。………悠平君か、覚えとくよ」 不適に笑う瑞樹に、ちひろはゾッと背筋を凍らせたのだった。 ◇ ◇ ◇ 「おかあさーん。絆創膏って、どこにあったっけ?」 お風呂上がり、ヒリヒリと痛む膝を忌々しく思いながら、ちひろはリビングの戸棚をガサガサと漁っていた。 キッチンから、母の葉子が顔を出す。 「そこにあると思うんだけど。なかった?」 「うーん、ないなぁ」 「なかったら、明日買っとくから」 「えー、明日ぁ?」 「1日くらい大丈夫だって。なんなら、瑞樹君に貰いなさいよ。どうせ夜行くんだし」 「もー……あの人に借りは作りたくないんだよ…」 「なにか言ったぁ?」 「なにもー」 ちひろはむくれたまま階段を上ると、部屋の中へ入って机に向かった。 膝を曲げた際、またピリリッと痛みが走る。 「うー……痛い。あの人のせいで、いっつも嫌な目にあってる気がするよ……」 打ち身のあった二の腕を見て、ふぅとため息を吐く。 バスの中で勝手気ままな事を言っていた瑞樹を思い出して、また、重いため息を吐いた。 「なんであの人と幼馴染みやってるんだろう。あんな勝手な人、見捨ててもバチはあたらないんじゃないかな……」 長い付き合いからの情なのか、それともすりこみか。 ちひろはいつまでたっても瑞樹の言いなりだ。 どうしても、そこから抜け出せない。
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