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「もっとこう、何か今の主従関係を打破出来るきっかけがあればいいんだけどな……」
うーむ、と天井を仰いで考え込む。
当然いい案など浮かばず、結局は睡眠薬の役目を終えない限り何も始まらないのだと言う結論に達した。
(うん、後一年ちょっとの辛抱だと思えばいいんだよ……頑張れ私……!)
そう、己を奮い立たせた時だった。
不意に、携帯に着信が入った。
いつもの催促の電話だろうかとディスプレイを確認すると、そこには櫻 悠平の名前が出ていた。
「も、ももももももしもし!?」
慌てて電話に出ると、電波の向こうから悠平の声が届いた。
「こんばんわ。ごめんね、突然。寝てた?」
「う、ううううん、寝てないよ!ど、どうしたの!?」
「あー、うん。あの後ちゃんと帰れたかなって。ごめんね、送れなくて」
「そ、そんな……!全然、無事に、元気に帰れたよ!」
電話の向こうで、悠平がぷっと吹き出したのがわかった。
「そっか、元気に帰れて良かった。つーか、ちひろちゃんって月城瑞樹とご近所さんだったんだね。もしかして、昔からの知り合いだったりす……」
「まっ、まさか!違うよ、あんな人!全然、他人だよ!」
悠平の問いに、ちひろは喰い気味で否定した。
「そっか。なんかあの人から、殺気を感じた気がして……」
「え??」
「ううん、なんでもない。そうだ、傷の具合はどう?」
「うん、おかげさまで。ただ、家に絆創膏がなくて、今日は布団で擦れそうでちょっと怖いんだ」
ちひろは頭をかきながらへへっと笑う。
「そっか、結構擦りむいてたもんね。腕は?大丈夫?」
「うん、大丈夫。本当にありがとう」
「なら良かった」
そこで、会話が途切れる。
気まずくなる中、ちひろはいい機会だと、思いきって告白の件について話すことにした。
こういう事は、早くしないといけない気がしたのだ。
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