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「さ、櫻君、あのね、今日の告白の事、なんだけど……」
「………うん」
「その、私、今まで櫻君をそういう風に見てきた事がないというか、そもそも、人を好きになった事がないというか……えーっと、つまり、今は櫻君の気持ちには、答えられ……ません」
やっとの思いで絞り出した声も、最後は尻すぼみになってしまった。
今までに感じた事のない罪悪感に苛まれながら、ちひろは唾を飲んで悠平の言葉を待った。
「そっか。それは……仕方ないね」
気落ちした悠平の声に、いよいよちひろの罪悪感もピークに達する。
あわあわと机から立ち上がると、見えもしないのに頭を何回も下げた。
「ごめんなさい!男の子に好きになって貰えるのも奇跡のような人間なのに、本当に何様だよって感じだよね、自分でもつくづくそう思うよ。だけど、櫻君には誠実に対応したいと…」
「待って待って。そんな慌てなくてよくない?」
「……え?」
「ちひろちゃんはさ、俺の事、まだそう言う目で見たことなかったからわかんないだけだよね?」
「う、うん……」
「だったらさ、これから見てよ、男として。異性として、好きになれるのかどうか。そこから始めても、いいんじゃない?」
「で、でも……!もし、そうなれなかったら、そんな酷い話はないわけで……!」
「大丈夫。そうなっても、それは、俺の努力が足りなかっただけで、ちひろちゃんが悪い訳じゃないから。それに、お試しで付き合うとか、そう言うのじゃなくて、これからもっと俺のこと知って貰えたらなって。今よりも仲良く出来たらなって思ってる」
「さ、櫻君……」
「んで、振り向かせられたら、また、ちひろちゃんに告白するから」
「………………」
悠平の言葉に、上手く声が出なくなる。
何故か切なくなって、引き離せなくなった。
「ごめん、俺必死過ぎるな……。とりあえず、これからも友達でってことで。わかった?」
「あ、ありがとう、櫻君……」
悠平の気遣いに、どうしてだか目頭が熱くなる。
どうしてこんなにもグズな自分を好いてくれるのか。
ちひろにはやはり理解出来なかったが、悠平の真っ直ぐな思いだけはわかる気がした。
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