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その瞬間、グイッと腕を引かれ、腰の辺りに腕を回されて抱き上げられた。
「わ、わゎ……!」
力強く抱えられ、そのままストンとベランダに降ろされる。
驚いて瑞樹を見上げると、素知らぬ顔でこちらを見下ろす瑞樹と目があった。
「お前さ、案外重いな」
「あっ、ごめ………じゃなくて、どうしたの?急に。何か変なものでも食べて……」
「なんでそうなるんだよ。お前が怪我してるから一応迎えに来てやっただけだろ。そのせいで万が一落ちたら俺も寝覚めが悪いしな」
「あっ、そっか。それはありがとう」
「腕、赤いな」
「あぁ、大丈夫だよ。薬も塗ったし」
「ふーん」
瑞樹は素っ気なく頷きながら部屋の中へ入ると、ベッドの上に寝転んだ。
そんな瑞樹を見送った後、ちひろは自分の手にそっと目をやる。
(手、大きかったな……。昔は、同じくらいだったのに)
何となく寂しくなりながら、ちひろも後に続いてベッドの淵に腰を下ろした。
暫くの沈黙が続く。
何故だか、ちひろは心のもやもやを瑞樹に聞いて欲しくなった。
「あのさ、瑞樹くん」
「ん?」
「瑞樹くんは、どうやって守口さんの事好きになったの?」
それまで寝転んでいた瑞樹が「はぁ?」と起き上がる。
「なんだよ突然」
「いや、ちょっと参考に……」
瑞樹は肩で息をつくと、呆れたように言った。
「お前さ、そもそも間違ってんだけど。どうやって、じゃなくてどうして、だろ」
「あ…」
「どうやって好きになるのか、とか聞いてる内は人の事好きになれねーよ。それに、人を好きになるのに理由なんて……」
どうしてだか、瑞樹はそこで言葉を切った。
「?」と首を傾げるちひろに、瑞樹は八つ当たりのようにベシッとチョップをお見舞いしてくると、また寝転んだ。
「な、なぜ!?」
「うるさい。お前が余計なこと聞くからだ」
「だからってひどいよ……」
ちひろは痛む頭をさすりながら、気持ちを立て直して言った。
「と言うことは、恋はするものじゃなくて、やっぱり落ちるもの?」
その問いに瑞樹は暫く沈黙した後、不機嫌に答えた。
「まぁ、そんなもんなんだろうけど、色々条件とか、自分の理想とかそう言うので恋人を選ぶのだってありだろ。ちなみに俺は後者だ」
「……凄いことをあっさり言ったね」
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