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「感心かぁ……」
窓の下を覗き込む。
そこには、皆が完璧だと評する月城 瑞樹がいた。
ただ、ちひろには彼が完璧には見えなかった。
容姿端麗、文武両道、そのカリスマ性は認めるが、今の彼はどこか人間味に欠けるのだ。
彼女達の気持ちをわかろうと努力してみても、何故だかあの笑顔が模範的な作り笑いに見えてしまう。
いや、間違いなく作り笑いなのだ。
その事を、ちひろはよく知っている。
(………でも、その作り笑いも周りにとっては完璧なのかもしれない……)
ちひろはうむ、と一人で納得しながら彼を眺めた。
すると、ふと、彼が顔を上げた。
鋭くも綺麗な瞳がこちらを見る。
目があった気がして、ちひろは反射的に手を上げた。だが、ふいっとあからさまにそらされてしまった。
どこに向ければいいかわからない手をそろそろ下ろし、その手でポリッと頬をかく。
隣で女子達が、「こっち見た~」と騒ぎ始めていた。
加菜恵も同様、飛び上がって喜んだ。
「ね、見たちひろ!?今絶対こっち見たよね!?ね!」
「うーん、どうだろう……」
「絶対目があったって!」
「そんなに嬉しい?」
「嬉しいに決まってるでしょ!ちひろってば、どうしてそんなに興味ないの?あの人と目があったら女の子は皆好きになっちゃうのに」
「そうでもないと思うけどなぁ」
むむっとちひろは両腕を組んで考え込む。
「じゃあどんな男だったらいいのよ」
「うーん……普通の人、かなぁ」
「普通の人?」
「うん。厳密には、あの人みたいな人じゃなかったらいいかな」
心からそう言うと、加菜恵が信じられないと言った様子で眉をつり上げた。
「イケメンで頭も良くて運動も出来て、その上性格もいい、そんなすべて揃った男じゃない方がいいなんて、正気で言ってるの!?」
「う、うん。おかしいかな?それに、あの人、完璧と言うよりは、それにこだわってるというか……」
「こだわってる?」
ちひろは大きく首を縦に振ると、力強く言った。
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