第1話

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「感心かぁ……」 窓の下を覗き込む。 そこには、皆が完璧だと評する月城 瑞樹がいた。 ただ、ちひろには彼が完璧には見えなかった。 容姿端麗、文武両道、そのカリスマ性は認めるが、今の彼はどこか人間味に欠けるのだ。 彼女達の気持ちをわかろうと努力してみても、何故だかあの笑顔が模範的な作り笑いに見えてしまう。 いや、間違いなく作り笑いなのだ。 その事を、ちひろはよく知っている。 (………でも、その作り笑いも周りにとっては完璧なのかもしれない……) ちひろはうむ、と一人で納得しながら彼を眺めた。 すると、ふと、彼が顔を上げた。 鋭くも綺麗な瞳がこちらを見る。 目があった気がして、ちひろは反射的に手を上げた。だが、ふいっとあからさまにそらされてしまった。 どこに向ければいいかわからない手をそろそろ下ろし、その手でポリッと頬をかく。 隣で女子達が、「こっち見た~」と騒ぎ始めていた。 加菜恵も同様、飛び上がって喜んだ。 「ね、見たちひろ!?今絶対こっち見たよね!?ね!」 「うーん、どうだろう……」 「絶対目があったって!」 「そんなに嬉しい?」 「嬉しいに決まってるでしょ!ちひろってば、どうしてそんなに興味ないの?あの人と目があったら女の子は皆好きになっちゃうのに」 「そうでもないと思うけどなぁ」 むむっとちひろは両腕を組んで考え込む。 「じゃあどんな男だったらいいのよ」 「うーん……普通の人、かなぁ」 「普通の人?」 「うん。厳密には、あの人みたいな人じゃなかったらいいかな」 心からそう言うと、加菜恵が信じられないと言った様子で眉をつり上げた。 「イケメンで頭も良くて運動も出来て、その上性格もいい、そんなすべて揃った男じゃない方がいいなんて、正気で言ってるの!?」 「う、うん。おかしいかな?それに、あの人、完璧と言うよりは、それにこだわってるというか……」 「こだわってる?」 ちひろは大きく首を縦に振ると、力強く言った。
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