第1話

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特にファンタジーが好きで、気に入った小説には想像で挿し絵を書いたり、二次創作を書いたりしてときめいていた。 そして、わくわくやドキドキを与えられる側ではなく、与える側になりたいと思うようになったのは高校に進学した頃だ。 物語を読み終えると、どうしてだか寂しさが募るようになっていた。どんなにハッピーエンドでも、胸にぽっかりと穴が空いたように、とてつもなく寂しくなった。 そして与えられる側は、いつだってその寂しさを抱えなくてはならないと思った時、与える側ならどうなのだろうと考えたのだ。 そんな邪心から始めた物書きは、案外しっくりときて、徐々にちひろを魅了していった。 書きたいものが溢れでるままに、筆を走らせた。 誰に見せるでもない、本当に自己満足の代物なのだが、それでも楽しくて楽しくて仕方なかった。 (うん、今日は頭が冴えてる……!) そうして、いつものように夕飯と入浴を終えたちひろは、自室のパソコンに向かって文字を打ち込んでいた。 授業中に書いたプロットを確認しながら進めていく。 当然、授業中にこんな事をやっているので、ちひろの成績はかんばしくなかった。 だんだんと順位が下がっていくのはわかっていたが、あまり気にならなかった。 今のちひろには、勉強よりも書くことが一番重要だったからだ。 ちひろはキリの良い所で指を止めると、グッと伸びをしてイスの背にもたれかかった。 チラリと時計に目をやり、時間を確認する。 時計の針は夜の11時を指していた。 (もうそろそろかな……) げんなりしながら携帯の液晶画面を確認すると、待ち構えていたかのようにタイミング良くメッセージが入って来た。 そこには、「そろそろ来い」と言うそっけない文面が写し出されていた。 (さて、行くか) ちひろはイスから立ち上がると、部屋の窓をガラリと開けた。 そして2階の小さなベランダに立つと、慣れた手付きで命綱を腰に巻き付け、柵をよじ登った。 目先には、作りが全く同じな家のベランダが間近にある。 ちひろはそこへ、よっ、と飛び移ると、命綱を外して窓をコンコンと叩いた。 すると、カーテンが開き、向こう側から窓がガラリとあいた。
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