ヒトはそれを命と呼ぶ

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 場面は昼から夜へと大きく変化した。  小さな家屋がいくつも並んでいる様相から、集落であろう。集落の中心は広場になっており、夜の静寂にパチパチと何かが爆ぜる音だけが木霊する。  広場の中心には、まだ若い……というより少女と形容した方が似合いそうか、まだあどけなさの抜けない少女が一糸まとわぬ姿で磔にされていた。  周囲には奇異な物を見る大勢の観衆。磔にされた少女は不敵な笑みで周囲を睨む。 「やはり、女だ。男の真似事など、ふざけたことをしやがって!」  観衆の一人が静寂を怒号で切り裂いた。  その声からは、憎しみ以外の感情は介入していない。純粋な嫌悪だけで放たれた言葉だ。 「して、何か最後に言い残すことは?」 「十字架を……掲げてくれ」  裸の少女が語気を強めて短く告げると、彼女の前に十字架が掲げられた。そして……先程からパチパチと音を立てる松明の炎が……少女を拘束している柱へと……。 「ちガウ! コれデモなイ! モットもットチがうデータをヨミコまナいト……」  機械であるはずの彼女から、不思議な事に焦りの感情が滲み始めた。  磔にされていた少女は燃え盛る炎に包まれ、灰へと変化する。また、データとなってレンズから取り込まれ、先程と同じようにショートを起こして小爆発が起きた。  それでも、彼女は次の映像へと、意識を集中させていく。
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