ヒトはそれを命と呼ぶ

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 白を基調とした建物へと、場面が移り変わった。  辺りは農村なのだろう。雄大な自然が見渡す限り広がっている。  しかし、この白い家のような建造物は異様な雰囲気を放っていた。また、農村のようにも見えるのに、辺りにはヒトの姿が見当たらない。  白い家には、焼却炉のようなものが併設されている。  レンズに、辺りに立ちこめている臭いの成分として燐とチクロンβと表示された。  白い家の中に映像が移り変わる。広がる光景はまさに地獄絵図。ヒトが次々と苦しそうに藻掻き、倒れ、死んでいく様子がコマ送りのように何度も、何度も繰り返された。  普通の精神でそんなものを見ようものなら、瞬く間に気が振れてしまうであろう。  それほどに、凄惨な映像だ。辺りの、長閑な農村とは全くの不釣り合いな白い家の内部。  中で死んだヒトは、焼却炉で燃やされ、骨は砕かれて川へと流される。  そこで映像は暗転する。ロボットである彼女の体からは電流が漏れ、余りにも痛々しい姿と成り果てていた。綺麗な髪は焼け焦げ、左半身が吹き飛んだことでまともに立っていることすらままならない。  彼女はとうとう、力尽きて、その場に倒れ込んでしまった。  気がつくと、レンズには先程の白い家とは違う場所のようだが、同じように大量のヒトが密室に閉じこめられて命を奪われていく姿が映る。  先ほどよりも広い施設内では、独房とも呼べる部屋で日記を書き綴る少女の姿があった。
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