2人が本棚に入れています
本棚に追加
「隊長、本部から連絡で……敵は形態を変化させることが出来るという事です。下手に攻撃を加えると増殖してしまう可能性があるとのこと……そして、その増殖のスピードは従来のものと比較にならないという事です」
「なんだと……どうすればいいんだ」
隊長は眉間に皺を寄せた。
「だから俺を出せって言ってるんだ」
「まだ、我が部隊は出動命令が出たいない。いくらオマエが有能だと言っても勝手な行動は許さんと言ったはずだ」
「隊長、いいんじゃないの? Kは無駄死にしてもいいんじゃないか」
「オマエみたいなヘタレに言われたくない」
私たちはここではイニシャルや数字などの記号で呼ばれる。
名前を知る必要もないし、教える必要もない。
部隊の仲間にそれ以上の感情をこの中で持つことは禁じられていたわけではないが、暗黙の了解のように皆任務だけを遂行していた。
任務がない時は、それぞれに鍛錬をし、いつやって来るかわからない敵に備えているのだ。
鍛錬、訓練中もここにいる皆の事は何も知らない。
「やめなさいよ……H。絡むなんてあなたらしくないわ」
「Tは優しいな。Hを庇うのか」
「K、そう言う言い方はよくないわね」
「じゃあ、どういう言い方をすりゃいいんだよ」
私は溜息をついた。
「こんな緊急事態だっていうのに仲間割れをしてる場合じゃないって言ってるのよ」
「優等生な発言だ」
「何とでも言いなさいよ。でも、出動してもそんな生意気な口を聞いてたら二度と余計な事が言えないようにぶっ放すわよ」
Hがヒュウと口笛を吹いた。
「おっかないねぇ……K、この辺りで一時休戦としよう。Tが怒るとこの要塞ごと破壊されかねないよ」
「ああ……違いないな」
「敵を倒す以前に僕らもジ・エンドだ」
「そいつはごめんだな」
HとKはニヤリと笑った。
最初のコメントを投稿しよう!