感染

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本部が慌ただしいまま、時間だけが流れていく。 「隊長! いつになったら出動できるんだ」 Kがしびれを切らし始めた時だった。 「何か……暑くないか?」 「そういや……暑いな」 要塞の天井も壁も、じりじりと焼けるように熱くなり始めていた。 額に浮かんだ汗は、戦闘服のせいでもなければ緊張のせいでもないようだ。 「なんだこれ」 「わからないわ……どこが熱源なの?」 「解りません……コンピュータが熱で上手く作動しないんです」 「本部からの指令がないのも、もしかしたらそのせいかもしれないな」 「くそ!」 頭を抱えるようにしてKが溜息をついた。 「隊長。これ以上、本部からの指示をまつのは賢いやり方じゃないと思いますが」 Hが冷静に隊長に言った。 私は、Hの言葉を聞きながら言いようのない違和感を感じていた。 「ねえ。ちょっとまって……下が異常に冷たいわ」 「……本当だ」 「ああ。天井や壁は気が狂うほど熱いのに……なんだこの冷たさは」 Kが辺りを見回してひざまづくと床に手を付けた。 「僅かだが……床面は振動を感じる。一体……何が起こってるんだ」 隊長は壁を触り、天所を見回した。 「奴らが……本格的に動き始めたか」 「隊長?」 「焦るな。いいか、奴らはこの要塞を破壊しようとしている……ほかの部隊も準備中だろうよ。誰が先に飛び出すか……そんだけのことさぁ」 「隊長は……この敵を知ってるのか?」 「ああ。いつだったか……おれが、丁度オマエらと同じ年頃だったか……随分前だったような気もするし。ついこの前のような気もするがな。その時にやりあってヤツに似ているな……同じだとは断定出来んがな」 隊長はニヤリと笑って私達を見た。 「おれの勘が外れてなきゃ。コイツはとんでもねえバケモンだ。さっき聞いた通り、コンピューターもバカにしちまうし……もしかしたら、もうとっくに給水、排水系もやられちまってるかもしれねえな」
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