【全ての始まり】

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「─ゆ──ん」 プカプカと、まるで体が海の底にあるかのような感覚。 「─ゆい──さん」 ここが死後の世界なのかな。 ……まだまだやり残した事あったのになぁ。 「──ゆ─とさ─」 やり残した事を脳内リストにまとめて見ようかと思ったけど。透き通った女性の声が聞こえる気がする…気のせいだろうか。 「──ゆいとさ─」 俺の名前を呼んでいるらしいが、目を閉じたままだったので声の主がわからない。まずは目を開けようかな。 「あっ!目覚めましたか!」 目を開けるとそこにいたのは…… 女の子……か? いや、可愛いというより綺麗な人だから大人の女性だろうか。 しかも羽の生えている、天使か? 誰であろうとまずはコンタクトを取らないといけない、声は、出るだろうか? 「あ、あ……あー、ゴホン。すいません、あなたは天使ですか?」 「はい」 天使はニコリと微笑みながら答えた。 「俺は確かに死んだんですか?」 「はい」 天使は残念そうな顔になると答えた。 そっかぁ……死んじゃったかぁ……。 実につまらない人生だった、一度は恋というものを味わってみたかったのだけれど。 「でもあなたはまだ生きるチャンスがあります」 「チャンス……?」 「はい、あなたが死んでしまったのは『偶然』に『偶然』が重なった結果ですから……」 俺は「つまり」と言うと、天使の話に割り込む。 「俺は元々死ぬべきではなかった、と?」 「はい」 天使はまたもニコリと微笑み答えた。 それにしてもチャンスか。 生きるチャンスとはどうゆう事だろうか、生き返らせてくれるのか? 「私の部下が少し『世界の設定』を狂わせてしまいまして、そのせいであなたは死んでしまったのです。だからあなたには上司の私が責任を持って生き返らせます」 『世界の設定』ねぇ……こりゃまた壮大な話だ。 それより生き返るなら日本がいい、なんとなく外国には怖いイメージがある。 「あの、できれば日本で生き返りたいんですけど……俺、外国にちょっと怖いイメージ持ってまして……」 俺の言葉を聞くと。 「あぁ、いい忘れてましたか」 天使はその透き通るような瞳で俺の方を見つめてこう言った。 「あなたには今から異世界に行ってもらおうと思っています。なので日本どころか、地球に生き返ることはできません」 俺は目の前が真っ暗になった。
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