0人が本棚に入れています
本棚に追加
「─ゆ──ん」
プカプカと、まるで体が海の底にあるかのような感覚。
「─ゆい──さん」
ここが死後の世界なのかな。
……まだまだやり残した事あったのになぁ。
「──ゆ─とさ─」
やり残した事を脳内リストにまとめて見ようかと思ったけど。透き通った女性の声が聞こえる気がする…気のせいだろうか。
「──ゆいとさ─」
俺の名前を呼んでいるらしいが、目を閉じたままだったので声の主がわからない。まずは目を開けようかな。
「あっ!目覚めましたか!」
目を開けるとそこにいたのは……
女の子……か?
いや、可愛いというより綺麗な人だから大人の女性だろうか。
しかも羽の生えている、天使か?
誰であろうとまずはコンタクトを取らないといけない、声は、出るだろうか?
「あ、あ……あー、ゴホン。すいません、あなたは天使ですか?」
「はい」
天使はニコリと微笑みながら答えた。
「俺は確かに死んだんですか?」
「はい」
天使は残念そうな顔になると答えた。
そっかぁ……死んじゃったかぁ……。
実につまらない人生だった、一度は恋というものを味わってみたかったのだけれど。
「でもあなたはまだ生きるチャンスがあります」
「チャンス……?」
「はい、あなたが死んでしまったのは『偶然』に『偶然』が重なった結果ですから……」
俺は「つまり」と言うと、天使の話に割り込む。
「俺は元々死ぬべきではなかった、と?」
「はい」
天使はまたもニコリと微笑み答えた。
それにしてもチャンスか。
生きるチャンスとはどうゆう事だろうか、生き返らせてくれるのか?
「私の部下が少し『世界の設定』を狂わせてしまいまして、そのせいであなたは死んでしまったのです。だからあなたには上司の私が責任を持って生き返らせます」
『世界の設定』ねぇ……こりゃまた壮大な話だ。
それより生き返るなら日本がいい、なんとなく外国には怖いイメージがある。
「あの、できれば日本で生き返りたいんですけど……俺、外国にちょっと怖いイメージ持ってまして……」
俺の言葉を聞くと。
「あぁ、いい忘れてましたか」
天使はその透き通るような瞳で俺の方を見つめてこう言った。
「あなたには今から異世界に行ってもらおうと思っています。なので日本どころか、地球に生き返ることはできません」
俺は目の前が真っ暗になった。
最初のコメントを投稿しよう!