殺人ギャンブル第1レーン2

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 バスカビル・クリニックの院長を勤める杜倫子の父親、智行はサイコパスだった。診断を下したのはカウンセラーをしていた母親の静香。犯罪者と言う特性に惚れ込んで結婚した二人の間に、倫子と弟の雅之が産まれた。  静香は智行の人格障害を治療することがかなわず、凄惨なDVを受けていた。雅之は厨二病になり、智行と対立し殴り合いの喧嘩をする毎日。  家庭内で自分がマトモだと思った倫子は、同時に家族のいかれた頭を直してやりたいと考え、大学を卒業後はクリニックを開業し、サイコパスと厨二病の頭の中を謁見することに成功した。 バラバラにした人間の手足をピンに見立てて頭をボーリング玉のように転がしてあそぶもの。またはそれらをちぐはぐに繋げて禍禍しい千手観音を作って崇拝するもの。地震や火災を起こす超能力を使い世界の粛清だかおかしな発言をするもの...... 思考を映像化したものだと判っていても、こんな世界、片っ端からぶち壊してやりたいと意を決して始めたのがサイコパスと厨二病の完全治療だ。  「林って男が言ってた事だけど」  話せることを話せる内に話しておこうと倫子は口を開いた。ちんたらやってるとまた主催者が何か仕掛けてくるので手短に。  「優勝者は、次のギャンブルの刺客にされるってことですか?」  「私たちを生かしておく積もりはないみたい。それにしても妙なのよね」  「妙?」  「殺人ギャンブルは、私たちの前からあって、何回か続けられているにしろ、船内には遺体が一体も見当たらないのよ」
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