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玲香は黙って頷いた。
個室の廊下から、誰かが近付いて来る足音が玲香と倫子のいるクローゼットに近付いて来る。軽快なブーツの靴音だ。
「誰か来ますね」
「篤意先生は脚を負傷しているから、早く歩くことは出来ないし、私たちがどこに隠れているかも判らない。主催者が寄越して来た刺客ね」
倫子は耳を澄ませながらそう言った。
「8番の選手に出て貰います。倉田冴子(くらた さえこ)さん。趣味であるDIYで作った監禁部屋に、交際相手を閉じ込めて、DIYで作った凶器で殺害し、DIYで作った棺桶の中に収納した多彩な女性です」
予想通り、主催者は次の刺客を倫子たちに差し向けているようだ。
「動画で観た事があります」
玲香は都市伝説の捏造を動画サイトでやっていたので、視聴したものを思いだした。巨大なシルバニアファミリーのセットとも言える光景、その中に交際相手を監禁して一緒に凄し、飽きたら断捨離。文字通り、切断して、バラバラに解体して捨てた。
「殺人収納の匠ってテレビじゃ言われてたわね」
そんな女の頭の中は何が収納されているのか、倫子は興味が湧くと共に、根っこからすげ替えてやりたくなった。ここでは、ビフォアが生ならアフターが死だが。
個室の扉が静かに開いた。
倫子と玲香は互いに見詰めあうと、ゆっくりと頷いた。
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