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「三で行くわよ」
倉田を充分に引き付けてから、一気に個室からトイレに向かうべく、三カウントとると倫子は提案した。
「三......」
頷くと同時に玲香はカウントを始める。
「二......」
倫子が続く。
次でクローゼットから飛び出すべく、深呼吸を一つ「い......」
一と言おうとした瞬間に、クローゼットの扉から刃物のような鋭いものがどんと伸びて来て、倫子の目の前を通過した。
「 !」
カウントを止めた倫子は表情を凍りつかせる。呼吸を止めた顔に冷たい汗が額から流れ、生唾がごくりと喉元に落ちる。
倉田が船の中で自作した凶器で、外から刺し殺そうとしている。二人が飛び出してくるのを待つ積りには倉田にはない。クローゼットの扉を破壊する勢いで次々と扉に穴を開ける。
大きくなった穴から、黒髪にパーマをかけた、無表情な女の顔がこちらをじろりと見た。
倫子は下がってと玲香を後ろに下げると、クローゼットの扉を内側から力一杯に蹴破る。突然開かれた扉に当たり、倉田は後方に転倒した。
「今よ、黒山先生っ!」
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