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僕は苦笑しながら言った。冷蔵庫から緑茶を出し、花塵さんにとってもらったコップに注ぐ。僕が一口飲むまでお互い無言だったが、ややあって花塵さんが言いにくそうに口を開いた。
「あなたは…その、あまり仲良くないのかしら」
「家族と?」
「ええ」
僕はお茶を飲み、どういうべきか考えた。
「別に仲がよくないってわけじゃなくて…ただ、お互いどうすればいいかわからないだけだよ」
僕のそっけない返答に花塵さんは「そう」と言った。この話題にこれ以上の進展は望めない。僕らの間に沈黙が流れた。僕は居心地が悪くなって、花塵さんに似たような質問をした。
「花塵さんはどうなの?家族と仲いいの?」
「まあまあね。必要最低限の会話しかしない程度」
「…それって仲いいのかな」
「さあ?」と肩をすくめる花塵さん。菜箸を置き、僕を見て少し驚いたような顔をした。「…ところで、あなたが持っているその小箱はなにかしら」
「両親の寝室にあったんだけど…鍵がかかってて僕にもわからない」
その言葉を聞いて、花塵さんはにんまりと笑い「なるほどね」と呟いた。僕はいやな予感に顔を引きつらせつつ、彼女の言葉を促した。
「あら。あなたはゲームが趣味なんでしょう?なら分かるはずよ」
「…えーっと…ごめん、『クエスト』しかでてこない」
「ならそれでいいわ。これはきっと、あなたの両親から課せられた『クエスト』なの」
「…つまり?」
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