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「実はね」
母はそう切り出した。
「家族が増えることになったの」
「…まぁそうだろうと思ったよ。よかったじゃん」、胸が温かくなると同時にじわじわと身体が痺れていった。末端から中心にかけて痺れる速度は2秒と掛からなかった。
「で、どっち?女の子?男の子?」
「…両方だよ」父が優しく言った。「両方?ということは双子なんだね。おめでとう」
「いや、そうじゃない」
父の口調は何かを含んでいた。彼の言葉を僕は理解できず、相槌を打たなかった。
父は僕の沈黙を当然のものだとし、軽く頷くと「見てもらった方が早いかな」という謎の呟きを零した。
見てもらった方が早い…?
父の視線は僕の斜め上に注がれた。僕はあえて振り返らない。
「おいで!」
彼は大きな声で何かを呼んだ。
何人かの足音が聞こえ、僕は自分の理解が及ばない出来事が起きていることに、ほんの少し恐怖を覚えた。目を閉じ、足音が止むのを待つ。
準備が整ったのか、足音は僕達の前…大画面テレビと何人掛けかわからないソファーの間で止まった。
「さぁ、紹介を始めよう。目を開けて、琥白」
父の愉しそうな声で、僕は恐る恐る目を開けた。僕の頬の筋肉がぴくぴくと痙攣する。
「…はは。なにこれ」
目の前には、8人の少年少女と1人の女医が並んでいた。
「これから一緒に住むことになる家族さ。ほら、先に君から名乗りなよ。琥白くん」
父は愉しそうに笑っていた。僕の気も知らずに。
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