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「次は俺か。」と花塵さんの隣にいたイケメンが言った。あまり口を動かさず、淡々としている。僕が頷くと彼は気だるげにため息を吐いた。
「和宮無憂樹。カズノミヤは皇女和宮と同じ…でも、皇族じゃないからね。ムウジュは憂い無き樹木って書いてムウジュ。趣味は特になし。俺も君と同じ白木高に通います。よろしくね。」
感情が一切込められていないことにちょっと驚きつつ、僕は彼をまじまじと見た。
「ねぇ、それって本名なの?」
「本名。」
「試験のとき書きづらくない?」
「慣れた。」
「長いからあだ名つけていい?」
「お構いなく。」
会話がすぐに終わる上にずっと無表情で全てが棒読みだった。話していて少しつらい。この人とは一緒のクラスになりたくないかなと思いつつ、彼のあだ名を考えることにした。
「…カズくんとかどうかな?」
「お構いなく。」
やはり表情一つ変わらない。
「じゃあ俺も君の事、あだ名で呼んでいい?」
カズくんがまっすぐ僕を見た。その目には光が無く、僕には彼が恐怖映画の幽霊に見えた。
「うん、いいよ」やっとのことで僕は微笑んだ。よかった、声は震えていない。カズくんは僕をじっと見つめながら少し考えて「じゃあ…琥白くんで。」と言った。
「……それってあだ名なのかしら?」と明が笑顔で言った。
「え、だめかな。」とカズくんが無表情で答える。
天然なのかボケなのかよく分からないが、僕はとにかく「よろしくね」と言った。
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