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「そんなことより、足大丈夫か? 火傷しただろ」
真中は自分の右膝に視線を落としたけど、暗がりじゃ赤くなっているのかどうかはわからない。
だからといって、このオレが鼻先を近づけてまで、じっくり観察するわけにはいかないし。
「大丈夫。たいしたことないよ。ありがと」
真中は顔を上げて、笑った。
濡れた頬とまつ毛が、月明かりに照らされてキラリと光る。
わずかでも笑顔が戻ったことに、オレは心の底から安堵した。
「あれ? 変だなぁ」
自宅の敷地に入りかけて、真中は首をかしげた。
「もう暗いのに、どの部屋も電気がついてない……まだ誰も帰ってないのかな」
一度訪れたことがある二階建ての真中の家は、しんと静まり返っていた。
お父さんは仕事だろうし、中学生の弟くんはまだ部活で戻っていないにしても、昼間のパートしかしていないって言っていたはずのお母さんもいないなんてことがあるのだろうか。
だけど、オレも真中も、多少引っかかりを覚えながらも、それ以上深く考えることはしなかった。
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