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次の日の朝、事態は突然動きはじめた。
「信五! 信五、お前、今日は学校行くのやめろ!」
ティッシュで鼻をかみながら自室から降りてきて、リビングに入るなり、テーブルに着いていた親父に怒鳴られた。
「はぁ?」
その言葉の意味も、遠距離通勤のために、いつもだったらとっくに家にいないはずの親父がまだパジャマ姿でいることも、すぐには飲み込めなかった。
「早朝からこのニュースで持ちきりだ! 死にたくなかったら、おとなしく家にいろ! 外に出るな!」
「何言って」
オレは、親父が指し示すテレビの画面を見た。
戦闘機が映し出されている。
航空自衛隊の基地からあまり離れていないこの辺りでは、しょっちゅう飛んでいるのを見かけている機体で、とくに珍しくも何ともない。
テロップが流れて、まさしくその基地の内部であることがわかった。
「この前の航空祭で、とんでもないウイルスがばらまかれたらしい。パイロットが自首してきたんだ。感染した人間は自殺したくなるそうだ。そのウイルスが付着した物を触って、その手で粘膜に触れなければ大丈夫だそうなんだが、自殺しようとしてる人間からは呼気感染するらしいんだよ」
オレは、親父が昨夜読んだ小説のあらすじでも語っているのかと思った。
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