さよならセンチメンタル

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「父さんは航空祭の日からずっと仕事だったからな。離れた都内の会社で助かったよ。この辺りで過ごす時間が短かったからな。運よくお前も感染してないみたいだし、収束するまで家の中でじっとしていたほうがいい」  オレの脳はまだ話に追いつけていなかった。 「は……? ウイルス……? 何だそれ」 「父さんも信じられないよ。自殺したくなるっていうか、物事を悪いほうに考えすぎて鬱になるんだと。パイロットの知り合いの研究所員が造り出したウイルスで、この頃は簡単に人殺しする人間が増えたから、人々がもっと深く考えるようになったらいいと思ったらしい。ふざけてるよな」  言葉を失った。  そんなことが可能なのか。  まるで、本当に小説か、B級パニック映画の中のことみたいじゃないか。  オレはハッと思い当たる。  本田。  あいつはどうして死を選んだ。  いつも明るくスカッとしていて、この世から逃げ出したくなるほどの悩みなんてかかえていなかったはずだ。  まさか、本田はそのウイルスに感染していたっていうのか? 「ニュースで知る限り、この辺りの感染者はどんどん増えてる。どんどん人が死んでるんだよ。そんなところに外に出たら、感染なんてあっという間だ」
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