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親父は厳しい目で言い、またテレビに向き直った。
「でも、幸いなことに、その研究所員はワクチンも同時に開発していたらしいんだ。警察と自衛隊でそれを押収することに成功して、夕方までには準備を整えて、この辺一帯に散布するらしいんだよ」
「じゃあ……それで落ち着くのか……」
「ただ、その効果がものすごく強力なんだとさ。詳しい作用は父さんにも難しくてわからないが、もしかしたらこれまで以上に思慮浅い人間が増えるかもしれないって、その道の専門家たちがこぞって反対してるみたいだ。死ぬよりはいいだろうに」
オレはくしゃみをした。
親父が眉をひそめる。
「なんだ、風邪か? そういや、風邪を引いてる人も増えてるみたいだな」
「え? ……まさか、これ感染してるってこととかじゃ」
「いや、感染した人間にはそういう症状はまったく出ないらしい」
安心する一方で、疑問が湧いた。
本田が死んだ日、オレは彼女とずっと同じ教室にいたし、話もした。
すでに彼女が感染していたのなら、その呼気を吸ったオレは、なぜ感染しないんだ。
そして、それはオレだけじゃない。
――――――真中。
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