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オレはスボンのポケットから急いでスマホを取り出して、操作した。
早く、いつもと変わらない優しい声を早く聴かせてくれ、そう願うも、電話をかけている先の相手は、なかなか出てくれない。
十コールほど待ったところで、「……もしもし?」とかき消えそうな声が響いてきた。
「真中! 無事か?」
「……沢渡」
それから、真中は電波の向こうで、ひっくひっくとしゃくりあげはじめた。
「……お父さんも、お母さんも、弟もね? 死んじゃった」
最悪な事態が、そこでは起きていた。
「……テレビつけたら、外に出ちゃだめだって言うし……先輩のことが心配で電話してみたんだけど……出ないの……ずっと」
先輩はきっともう……。
それをオレは宣告することはできなかったし、教えてあげなくても、たぶん真中はもう知っている。
「……お前、お前は平気か?」
「うん……沢渡は?」
「オレも大丈夫。待ってろ。今行くから」
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