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授業が終わると、真中が声をかけてきた。
「沢渡。今日、放課後って予定ある?」
オレは両方の鼻の穴にティッシュを突っ込んだまま、振り向いた。
「いや別に」
くぐもった舌ったらずな声が出る。
真中はすぐさま噴き出して、お腹をかかえて笑い出した。
「バカじゃないのー。残念なやつー。顔がいいの自覚してないっ」
「褒めてんだかけなしてんだかわかんねーな」
オレは眉間にシワを寄せてみせる。
すぽっと抜いたティッシュから飴細工のようなアーチが姿を現して、それを見た真中がまた涙を流しながら笑った。
オレは箱からもう一枚華麗にティッシュを取り出すと、それをくるむ。
「なんだよ。放課後、何か用があんのか?」
「うん。ちょっと買い物に付き合って欲しくて。沢渡、帰宅部でしょ」
目元をぬぐう真中は、まだおかしそうに肩を震わせている。
「しゃーねーな」
そっけなく言うけど、実はかなりほっとしている。
同じ身体を震わせるなら、笑ってくれているほうがずっといい。
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