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「ねぇ、なんか人少なくない?」
真中がそう切り出してきたのは、プレゼントを買い終えて、モールの端しっこにあるドーナツショップで一息ついていた時で。
言われてはじめて、派手なくしゃみのあとに、オレは辺りを見回した。
六つ設置されているテーブルの、オレたち以外の席には誰もいない。
背中の観葉植物を越えて後ろの通りには、OLが二人歩いているだけだった。
「……平日だし、こんなもんじゃねぇ?」
そう答えてみたはものの、確かにいささか違和感は覚えた。
「でもさ、平日って言ったって夕方なんだもん、晩ご飯のおかずを買いにくるお母さんとか、もっといてもよくない?」
「有り合わせで済ませましょデーなんじゃねぇの? さっきの雑貨屋にはけっこう学生がいたじゃんか」
真中の弟くんのスマホケースを購入した店だ。
「そうなんだけど……」
真中はホットカフェオレのカップを両手で握りしめて、不安げに目をキョロキョロさせた。
大丈夫、オレがついてるじゃん、ってその頬をこの手で包み込みたい。
だけど、『恋人』でも『兄弟』でもないオレは、そんなことできないし、そんなセリフを口にしたら、この関係が壊れてしまいそうで、それも無理。
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