18人が本棚に入れています
本棚に追加
その時、唐突に、空気を切り裂くような悲鳴が上がった。
ドーナツを作っている調理スペースからだ。
さっきまでレジを打っていたアルバイトの女子や、陳列していた子や、トングをいくつも持ったままの店員も、泣きながら飛び出してきた。
オレはそれを見て、思わず息を飲んだ。
大きなフライヤーの前で、人が燃えている。
いや、もうすでに人だと呼べるものではなくて、人の形をしたバーベキューの肉の塊がそこにあるようにしか見えなかった。
オレはとっさに真中の頭を抱きかかえ、目を腕で覆った。
真中の口はぽっかり開いていた。
いつのまにかカフェオレのカップは手から離され、テーブルに落ちて、したたる中身は真中の膝を汚していたけど、熱さなんてまるで感じていないようだった。
それはブスブスと燃え尽きて、ゆらゆらと揺らめき、後ろに倒れた。
詰まっているはずの鼻にまで、使い古した濃い油の臭いが漂った。
悲鳴を聞きつけて飛んできた警備員が、青い顔をしながら、必死で携帯電話に話しかけている。
「油を……油を、自分で……」
アルバイトのひとりが、床にひざまずき、しゃくりあげながら、細切れにつぶやいていた。
最初のコメントを投稿しよう!