さよならセンチメンタル

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 バスの中でも、降りて真中の家まで送っていく間にも、真中は隣でずっと涙をこぼしていた。  相当ショックだったんだろうと思う。  無理もない、オレだって血の気が引いたんだから。  幸い、バスの乗客も通りを歩く人も、今日に限ってほとんどいなくて、人目を気にする必要はなかった。 「ごめんね……」  震える声で、真中は謝った。  畑と一軒家が交互に現れる田舎道には、外灯がぽつぽつとしかなくて、すっかり暗くなってしまった今時分では、真中の横顔もぼんやりとしか見えない。 「気にすんな。送っていくのはオレのお節介だから。そんな顔したやつをひとりで帰せるかよ」 「そうじゃなくて……わたしが買い物に付き合わせなかったら、沢渡、あんなもの見なくて済んだのに……」  真中はオレの心配をしていた。 「しかも、何の関係もないのに、警察に事情まで訊かれて……帰りがこんなに遅くなっちゃって……」 「バカ言ってら」  コンコン咳き込みながら、ぽろぽろ涙をこぼす真中の後頭部を、オレは掌底でぽんと叩いてやった。
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