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「いやはや、すまんね」
出るなり、誠が頭を下げた。
「まあ、なんとなくね。二人がそういう感じなのはわかってたしー」
美咲がふらふらと覚束ない足取りのまま答える。
「でもずいぶんと回りくどいことを考えたものだな君も」由美は美咲の手を取ってやりながら、「最初から私たちがお邪魔しなければよかっただけの話じゃないか」
「まあね。でも二人ともなんだかんだ奥手だから。こうでもしないと二人きりになんてなろうとしないだろ」
ゲームが始まって早々、啓介と順子を除く四人に届いたメールは、誠からだった。
「終わったら適当な言い訳で啓介と順子隔離する。よろしく」
おそらく彼は勝った場合、逆のことを二人にさせたのだろう。五人が出ていくよりはそちらのほうが自然だったが、彼にとって勝負如何はどうでもよかった。
逆にこれほどまでにあからさまなことをされたのだから、二人が何も感じないはずもないだろう。
誠は一斉にメールが届いても不自然じゃない状況を作りたかったし、もしかしたらそういう意図だったのではないかと二人に想像させることが目的だった。そのうえで、携帯を使ったゲームを考えたわけである。
「ほんと、おせっかいなやつだなあ」
「まあいいじゃない。俺らの関係もあと一年くらい。そろそろ何かしらの進展があったってね」
やんややんやとほかの三人が進んでいく中、
「あの二人、進展するかねえ」
尋ねてみると、
「しなきゃしないでいいんだよ。それにほら」
前方を示した指の先を見ると、よろけた美咲を隆が支えてやっている。
「なるほど確かに。感染してるのかもな」
言うと、誠はくつくつと笑った。
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