感染ゲーム

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 思えば七人で行動をするようになって二年近く経つが、お互いのことはあまり深く知らない。学校の外で顔を合わせると言えばたいていが飲みで、映画を見に行ったり、カラオケに行ったり、ディズニーランドへ行ったりと言うようなことは、僕たちの中ではあまり行われない。要するに飲み仲間であって、友達とは少し違うのだ。  部屋の主である啓介は、客人に気を遣うでもなく、一人早々にシャワーを浴びに立った。こちらも客人として気を遣うことはなく、勝手知ったる他人の家、戸棚から菓子を引っ張り出し、灰皿に煙草を預け、好き放題であった。  そうして酒気と煙に侵された部屋に一時間。先輩の愚痴も一通り済まされた後、会話はほとんどなくなり、深夜のつまらないバラエティ番組が垂れ流されているだけの無意味な時間に移り変わったのが、ようやく自覚される。早いと言えば早かったが、その前四時間、すでに酒を飲みまくっていた僕たちが眠くなるには、十分な猶予とも言えた。  次第に美咲が頭を何度か上下させ始める。隆の様子も怪しかった。一人さっぱりした啓介と、酒に強い由美だけがいまだ酒をあおっているが、ほかは手が止まってしばらく経つ。 「なあなあ」  そんな折であった。  誠が最後の煙を長く吐き出してから、 「ゲームしないか?」  提案をしてきたのだ。 「ゲームって? 王様ゲームとか?」微睡んでいる美咲の頭を肩に、順子が尋ねる。「酔ってるからってエロいことしようとしてる?」 「違うよ、違う違う」もろ手を振って誠が否定する。「俺が考えたゲームなんだけど」 「何お前、自分でゲームとか考えてんの? 暇人極まれりというか」 「いやね、前からなんか、この七人でできるゲームないかなあと思ってて」 「トランプでもウノでも、それこそ王様ゲームでもできるじゃんか」  言ってみると、 「どうせならこの七人でしかできないゲームのほうがいいじゃん。ってなると、この七人しかゲームのルールを知らない、と言うほうが、面白くない?」 「うーん、まあ、ものは言いようですな」 「ですなあ」不意に頭を起こした美咲が僕の意見に同調する。「ですですう」 「この酔っ払いでもできること?」 「シンプルだよ」  と言って誠が説明したのが、以下のルールであった。
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