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「うーん、つまり?」
「要するに陣取り合戦だよ」
「にしても、ウイルス側が優位過ぎない?」
啓介の疑問はもっともだった。ウイルスは常に先手を打てるが、ワクチンは常に後手を打たねばならない。なおかつ、解毒メールを送ることへのリスクが大きすぎる。
「でも究極を言ってしまうと、ワクチン側が最初に解毒メールを一斉送信したら、ドローになるわけだよね」
由美もこのルールの杜撰さを指摘する。
「そりゃあね。そりゃあそうなんだけど。まあまあ落ち着けよ。このゲームの肝は終わったときにわかるから」しかし誠は余裕そうな表情でそれらを無視する。「やってみましょうよ」
「別にいいけど……、もちろん不利なワクチンを、誠がやるわけでしょ?」
「そりゃあもう当然っすよ。俺、自分で考えたゲームだけあって、絶対に勝つ自信があるね。お前らのこともよく見てるから、反応でわかるぜ」
「なんかそれはそれでずるい気もするけど……。で、ウイルスは? 誰がやんの?」
「そうだなあ。じゃんけんで決めてもいいけど。うーん、啓介にしようか」
「えー、俺かよ」
当てられた啓介は不服そうに声を漏らし、あからさまに表情を歪めたが、やらないとは言わなかった。
現状、テーブルを囲む形で、十二時の方向に啓介、時計回りに、隆、僕、誠、順子、美咲、由美と並んでいる。選定の理由はほぼ真向かいに座っているからかもしれない。
「いいじゃん、一回だけだから。寝る前の暇つぶしだよ」誠は啓介の言動を意に介さず、「それじゃあ早速、始めよう」
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