感染ゲーム

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 誠の号令から一分も経たないうちに、ほぼ全員の携帯が鳴った。  届いたメールを開いて、なるほどこれは、確かに必勝法かもしれないと考える。 「わたし死んだー」  最初に手を上げたのは、美咲であった。顔を真っ赤にし、見るからに酒に酔っているのがよくわかる。 「あれま。先手を取られたな。啓介案外ノリノリじゃん」 「おいおいお前が考えたゲームだろ、大丈夫かよ」  一本取ったというのに、うれしそうな様子は一切なく、啓介は敵にエールを送ったようにさえ見えた。 「まあまあこれからこれから」  ほどなくして隆の携帯が鳴る。表情に変異はない。わきから覗き見ると「感染」の文字があったが、彼のポーカーフェイスぶりもなかなかのものである。  しかしすかさず、 「あ、救われたわ」再度鳴り、彼は手を上げる。「今結構ばれない自信あったけどなあ」 「隆は何か隠そうとするとき鼻を掻くからな。すぐわかる」 「そんな癖あるか?」  と聞かれたが、正直よくわからなかった。  次に由美が感染により死んだ。 「酒が足りないせいね」よくわからないことを言って、「これ、離脱しちゃうとつまらないわね」  そもそもウイルスとワクチンのためのゲームであることを言及したが、誰も何も言わなかった。 「さて、あと一人殺せば俺の勝ちだな。どうする? あっけないぜ?」 「まだまだこれからっすよ」  今、どっちつかずなのは僕と順子だけである。  と思ったのもつかの間、感染メールが届く。順子のほうにも何か届いたようだった。  僕は何の気もなしにちらりと啓介を見て、それから誠を見た。 「さてどうする? 迷っている暇はないぜ? どっちかだけ感染か、どちらも非感染か、はたまたどちらも感染か」 「さて、どうしたものかなあ」
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