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数日後。私は一人で図書室に向かっていた。
ここしばらく雨が降り続き、校内は薄暗い。
静かな放課後の校舎は人気がないせいか、なんとなくよそよそしい。ぼんやり歩いていたら、誰かにぶつかりかけてしまった。
「す、すみませ･･････っ」
目の前に立つ人を改めて見上げ、謝罪の言葉が詰まる。
柔らかそうな茶髪に切れ長の瞳、酷薄そうな薄い唇。哲也だった。私がぶつかりそうになった相手はなんと哲也だった。
突然の事に頭が真っ白になる。
哲也は。哲也はーー笑った。見たことのない、顔で。
「謝らなくていいよ。久しぶりだね、あず姉」
冷たい笑顔でそう言った。
「ひ、久しぶり･･････」
私はというと、もう、ものすごく狼狽えてしまい、焦りまくった。会うつもりのなかった義弟にあってしまったのだ。混乱してしまって、とにかくその場から立ち去ろうとした。
「え、えっと。じゃあこれで」
足早に歩き出そうとした時だ。
どん、と壁に押し付けられ、哲也の両腕の中に閉じ込められた。
え。
なに、これ。
「なんで逃げんの」
低い、硬質な声で哲也が言う。私はおそるおそる彼を見上げ、ひく、と息を呑んだ。
冷たい目で哲也が私を見下ろしている。
「に、逃げてなんか」
「無視してたよね」
哲也は私の言葉を遮って言った。
「何度も顔合わせてたのに、話し掛けてこなかった」
「･･････わかってたんだ」
「なにが。あず姉だってことに？ それとも俺のことチラチラ見てたこと？ どっちもすぐにわかったよ」
切り付けるような哲也の声が痛くて、私は睨むように彼を見た。
「わかってたなら、そっちから声をかければ良かったじゃない。なんで私ばっかり責めるのよ」
「卑怯者だからだよ」
さらり、と告げられて目が丸くなる。･･････卑怯者？
「自分だけ、関係ないみたいな顔して、すげー腹立つ。･･････ずるい女」
「っ！」
詰りながら、哲也はゆっくりと顔を傾けて私に近づいてくる。ち、ちょっと、これは。
「ーー調子に乗んな！！」
「ぐっ！？」
私は思い切り力を込めて哲也の足を踏んだ。よろめいた隙を狙って、彼の腕から抜け出す。
そして、言った。
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