第3章 囚われるかどうかは自分で決める

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しばらくの間、クラスのその男の連絡に目を通すこともせずわたしはばっくれ続けた。 それはそうでしょ。なにが悲しくてあんな目に自分から、わざわざ。そりゃ身体は激しく反応したし、生まれて初めて『いった』けど、だからってあんなの引き合わない。身も心も酷く消耗するし、快楽に溺れて自分を失ったあと理性を取り戻してからが本当にきつい。恥ずかしい姿態とあんな反応を人目に晒した、と思い返すだけで、もう…。 実に生きているのが嫌になる。 そんな訳でLINEも開封せずにずっと素知らぬ顔で放置していたが(教室で奴がそのことで大っぴらに声をかけてくることはなかった。クラブのことについては人前で話してはいけない、って厳重な決まりがあるらしい。わたしとあの男女二人組は同じクラスだから顔見知りでおかしくないが、クラブで知り合った者同士は外で顔を合わせても絶対に知らない振りをしなきゃならないってことも後で知った)、痺れを切らした奴からとうとう決定的な最後通牒が送信されてきた。 LINEで写真が送られてきたことに気づき、胸の内に嫌ぁな予感が広がった。既読をつけたくなくてそれまで中身を見ることもしなかったが。見出しに 『公開されたくなかったら』 の一文が見えて半端なく顔が歪む。そうか、やっぱり何か撮ってあったんだ。わたしが以後の誘いに応じないことは思えば想定済みだろう。大人しく言いなりになればそれは出さないけど、何かの保険のためにそういうものを押さえておこうと考えてもおかしくはない。 いやおかしいけど、そんなの。こんなことまでされる謂れはないと思う。でも、向こうからするとそこまで考えに入れて行動することは当然あり得る。 確認せずにいる度胸もなくて渋々それを開いた。あられもなく身体を拡げて男たちに弄ばれている肌色の何か。顔はぼんやりとしか写ってない…、けど。 知ってる人が見たら。わかる…、かも。 『ネットに一度公開しちゃうともう回収できないよ。そうなるのが嫌なら観念して。今週の金曜の午後でいいね?学校で待ち合わせて一緒に行こう』 わたしは重い重いため息をついた。結局こうなるのは。 どっかで何となく覚悟していた、のかも…。 諦めの境地で返信を打つ。 『その写真を削除してくれるなら。とにかくそれだけはお願いします。そしたら、金曜については約束してもいいですから』 即刻返信が来た。
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