第4章 わたしの身体はみんなのもの

10/20
前へ
/38ページ
次へ
感謝しつつその胸に体重を預けた。正直なところわたしは黒服の男の子たちをどうにも個別認識できない。服装のせいもあるけど、皆醸し出す雰囲気というかタイプが実によく似ている。かと言ってここまで見分けのつけられないあんぽんたんもわたしくらいだろうけど。この子の方はわたしのことをよく知ってくれているらしい。普段から気にかけてくれていたのかも、と思うと素直に有難い。 「大丈夫だよ。みんな、悪気は全然ないんだし。時々無茶苦茶だなあと思うこともあるけど普段は結構優しいから…。まあ、もっとちょくちょく顔出せばあんなにしつこくされることもないんだろうとわかってはいるんだけど。…来ればあれだと思うと、ちょっとね」 彼に頭を撫でられながら苦笑いが口の端に浮かぶ。残業がどうの仕事が忙しいのと口では言いつつも、本当のところは顔を出せばああしていつも、数人がかりで頭がすっ飛んで気を失いかけるほど激しく責め立てられるのがわかってるせいなのも否めない。あそこまで消耗しきって足腰もたたないほど貪られると思うとやっぱり気が重いし足が鈍る。 彼はわたしを両腕でぎゅ、と締めつけ、そっと頬に唇を当てて言った。 「それは無理ないよ。あんなの毎回かと思うと、さすがに憂鬱でしょ。もっとじっくり愉しめるくらいのペースならまだしもさ」 そこはどうなんだろ。わたしは口に出さずに彼の腕の中で小さく首だけ傾げた。 中途半端は却ってつらいかも。一人ひとりの顔も判別できないくらい次つぎと、朦朧となって自制心をなくすまで激しく抱かれる。あまりに強い快感は身体に堪えるから腰が引けてるけど、一方でそこまで責め立てられて初めて何もかも解放できるのも事実。重たい自分を手放して、恥も外聞もなく誰に見られてることも意識せずに思いきり感じて、いける。 落ち着いてじっくり愛撫されて丁寧に抱かれるより、我を忘れられる方がわたしには向いてるのかも。 内心で苦く笑う。それって既に、堅気のセックスじゃあり得ないけどね。 こっち方面に関しては普通の生活にはもう戻れないのかも…。 「もう平気だよ。こうやってここで静かにしてるだけでもだいぶ落ち着いてきた。わたし、結構丈夫な身体なんだなぁって自分でも思うよ」 彼の胸から顔を上げて笑いかけると、至近距離のその目がさっきまでと違う色を帯びて、微かに光った。 「うん。…しばらくこうしてようか、ここで」
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加