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彼の喉が大きく鳴るのがはっきり聴こえた。わたしは敏感な場所を彼の指先に預けながら甘くよがりつつ脳内を目まぐるしく働かせる。
これだけで済めば特に問題ないけど。この人、最後までしたがるかな。
奥のバックヤードにも人の気配はない。このままだと、彼と二人きりでする羽目になっちゃう。…けど。
彼の熱い息と体温が間近い。個性がないって勝手に思い込んでたその顔立ちが急にはっきりと目の中に飛び込んできて、ああ、名もない人なんて存在しないんだな、と実感が迫った。不意にそこから逃れたくなる。こんなに、誰かと二人きりで近くにいる、なんて。
…苦手。やっぱ無理。…かも。
でも、馬鹿な身体は反応を止めない。
「こんな、とろとろさせちゃって。溢れて流れ落ちてるよ。…ここ、蓋して欲しそうだね。我慢できないの?この場所でする?」
「んっ、あっ、…ここじゃ」
無理。ていうか、ここでなくても。
喘ぎ、身悶えしながら必死で身を離そうとする。二人では。
「…あ、何してんだもう。本当に、油断も隙もないな。なかなか戻ってこないと思ったら」
やや大きな声が廊下の向こうから近づいてきてほっと安堵する。よかった、邪魔が入った。わたしから離れようとしない彼から引き剥がすように顔を上げて見ると、微妙に記憶にないこともない他の黒服。体格がよくて声が大きくて元気がいいので少し目立っている、気がする。確か年数も結構いってた筈だ。
その人はつかつかとためらわずそばに来て、彼とわたしの間に割って入るように肩を掴んで身体の向きを変えさせた。それからいきなりわたしの顔を仰向かせて唇を吸い、はだけたままのバスローブを引き剥がすように足許に落とした。
その場にわたしを立たせたまま脚を開かせ、跪いて濡れたそこに舌を差し入れる。甘い声を上げて身を震わせたわたしを容赦なく責め続けたのち、のぼせたような表情を浮かべて見入っていたさっきの子の方を振り向いて一緒に参加するよう身振りで促した。
「お前はここに来てまだ間もないからよく知らないんだな。夜ちゃんは一対一ではしないんだ、絶対。何人相手でもいけるけどそれだけはNG。…そっちの休憩室のソファに移動しようぜ。この子、もう待ちきれないみたいだよ」
誰かと二人きりでは無理ってはっきりわかったのは学生の時。クラブの正式な会員になり、通い始めてしばらくした頃だ。
わたしは加賀谷さんと何となく気安い仲になった。
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