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俺も実際、女の子の会員を紹介するのは夜が初めてだから。顔合わせで何するのかは知らないんだけどさ」
話してるうちにマンションに着いた。中野の奴はだんだん興奮してきたらしくエレベーターを待ちながら顔を寄せてわたしの耳に舌をそっと這わせる。
「まあ、ちゃんと俺もついててあげるから。何かプレイでサポートが必要なら参加するし。いつもみたいにいい子にしてるんだよ。普段の夜を見せてあげれば絶対喜ばれるからね」
なんか、いやらしい想像してるな。エレベーターの上昇する箱の中で引き寄せられて唇を吸われ、手を掴まれて奴の前の部分に押しつけられた。わたしもすっかり馴れて、諦めの境地で従順にそれを柔らかく揉んであげる。奴は呻き、更にわたしに襲いかかろうとしたところで最上階に到着した。
カードキーで中野が部屋のドアを開け、失礼しますと大きな声をかけてリビングへ入っていく。わたしも観念してその背中についていった。
その人はキッチンとリビングを仕切るように置かれた広いダイニングテーブルに着いていた。少し不機嫌そうにパソコンを睨みつけ、時折マウスをかちかちと操作する。入っていったわたしたちを見上げるその表情には何の感情も窺えない。個人的な感想は特になし、といったところか。
男の人としてはかなり小柄な方だ。線が細く、やや神経質そう。こんな人が学生主体のセックス愛好クラブを統括してるなんて、知らなきゃ誰にも絶対想像もつかないだろうな。
「中野くん、だっけ。ご苦労様。この子が新会員登録希望者だね。…◯◯大学社会学部二年、通称『夜』さん」
頷いて何か発言しようと口を開く彼を押し留めるように手を挙げて、その人はきっぱりと言い渡した。
「ここまで彼女を連れてきてくれてありがとう。今日は君はもういいよ。この子は話が済んだらちゃんとすぐに帰らせるから。何も心配する必要ない。…終わるの待たなくていいから。お疲れ様」
中野の顔に不満げな色がさっと過ぎった。やっぱりこの人と二人でわたしをやる気でここまで来たらしい。残念だったね。奴は首をちょっと竦め、そちらに目も向けないわたしの横をすっと通りながら
「じゃ。…せいぜい頑張って、いい思いさせてあげなよ。…また連絡する」
と低い声で囁いて部屋を出ていった。ややあって失礼します、と声が聞こえて玄関のドアが閉じる音が室内に響いた。
その人は少しの間眉根を寄せてパソコンと格闘していた。
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