ラッキーウイルス蔓延中

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男性老人は、言ったとおりにそこにいて私に気さくに声をかけてくる。 「ラッキーウイルス、飲んでみましたか?」 私はこくりと頷く。 「物凄く効果がありました。だけど不安なんです。薬で手に入れた幸せなんて儚げで……。もう一つの解毒剤は私だけに効果があるのですか?私は幸せを維持するには、努力で維持していきたい。だけど、私だけに解毒剤が効果があるなら意味のない気がして」 男性老人は、微笑みながらうんうんと頷く。 「心配いりません。解毒剤もウイルスですから、皆さんに感染します。しかし、あなたに試してもらって良かった。作り上げてなんですが、人が努力しなくなるのでは?と私は危惧していた。使用者に同じ意見を言ってもらえたことが何より嬉しい。人生を無駄に費やした気もしますが、人は捨てたものではなかった。あなたの幸せ、心より祈ります」 男性老人は、そう言ってからまた電車を降りていった。
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