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「次の家は、庭がついてるから、そこでおっきな黒い犬を飼うんだ」
いつものように、笑顔で話す君。
私は何も言わず、流れる小川を見てるだけ。
「その家の近くには、すっごくおっきな海があってさ。
この川の水も、きっと全部吸い込んじゃうよ。
そしたら、ここのザリガニたちも、皆海で暮らすんだろうね」
喋るのは、いつも君ばかり。
私は、隣でただうなずいてるだけ。
流れる小川の淵に座って、君は退屈そうに足をばたつかせてる。
時々、向こう側を通る車に、道路に落ちた花びら達が巻き上げられて、小川に降り、
桜色の船になる。
どうか、私のこの想いも、一緒に連れて行ってくれないかな。
「これ、あげるよ」
君が、いつもカバンにつけてたキーホルダーをくれた。
両目が違う方向を向いた、パンダのキーホルダー。
長いベロを垂らし、奇妙なダンスを踊ってる。
触ってみると、表面がツブツブと泡立ってる。
「ずっとつけてたら、なんかぶつぶつになっちゃった。
きっとどっかで、変な病気に感染したんだよ。
あいつらみたいに」
二人でいつも遊んだゾンビのゲーム。
君は、ゲームをするよりも、私を驚かす事に夢中。
タイミングを計って、大声を出す。
母さんにうるさいと言われても、君は決してやめなかった。
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