四月

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「次の家は、庭がついてるから、そこでおっきな黒い犬を飼うんだ」 いつものように、笑顔で話す君。 私は何も言わず、流れる小川を見てるだけ。 「その家の近くには、すっごくおっきな海があってさ。  この川の水も、きっと全部吸い込んじゃうよ。  そしたら、ここのザリガニたちも、皆海で暮らすんだろうね」 喋るのは、いつも君ばかり。 私は、隣でただうなずいてるだけ。 流れる小川の淵に座って、君は退屈そうに足をばたつかせてる。 時々、向こう側を通る車に、道路に落ちた花びら達が巻き上げられて、小川に降り、 桜色の船になる。 どうか、私のこの想いも、一緒に連れて行ってくれないかな。 「これ、あげるよ」 君が、いつもカバンにつけてたキーホルダーをくれた。 両目が違う方向を向いた、パンダのキーホルダー。 長いベロを垂らし、奇妙なダンスを踊ってる。 触ってみると、表面がツブツブと泡立ってる。 「ずっとつけてたら、なんかぶつぶつになっちゃった。  きっとどっかで、変な病気に感染したんだよ。  あいつらみたいに」 二人でいつも遊んだゾンビのゲーム。 君は、ゲームをするよりも、私を驚かす事に夢中。 タイミングを計って、大声を出す。 母さんにうるさいと言われても、君は決してやめなかった。
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