四月

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二人だけの秘密の川べりに、肌寒い風が吹いて、 いつもの君の甘い匂いが、鼻をくすぐる。 なんだか、胸がうずいて、ドキドキするような、甘い匂い。 いつまでも嗅いでいたい匂い。 私は、君の匂いが知りたくて、勇気を出して尋ねる。 「……君の匂い、なんの匂いなの?」 君は、いつもの意地悪な顔で笑ってる。 「クスッ……内緒だもんね」 やっぱりね。 冷蔵庫や炊飯器に、目と口を書くと、喋りだす。 『エッチ』は、変態の頭文字。 マヨネーズをつけたら、ティッシュでも食べれる。 くだらない事は、たくさん教えてくれるのに、 私の知りたい事は、いつも内緒。 君がどこに行ってしまうのかも、教えてはくれない。 「耳貸して」 そう言うと、私を無理やり引き寄せて、耳に手を当てる。 「この匂いはね……ママの……魔法の薬なんだ。  この匂いを嗅がせると……その人と両想いになれるんだって…。  名前はね……あのね……『お金の木…』……わあっ!!」 君はまた、大きな声で私を驚かせる。 そして、ドキドキする胸を押さえてる私を見て笑ってる。 でも、耳に残ってる内緒話。 君の声は、私の耳に落ちて、 すごく、くすぐったくて、心地よくて…… いつまでもこうして、囁いていて欲しかった。 いつまでも、ずっと……。
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