四月

4/5
前へ
/5ページ
次へ
キラキラと笑う君の髪の先が、四月の肌寒い風に揺れて光る。 どうしてだろう。 とても悲しくなって、私は涙をこぼした。 絶対に、泣かないでおこうって決めてたのに。 「あーあ……泣いちゃ……ダメなんだよ……かっこ悪いなぁ」 いいんだ。 この涙は小川に流れて、きっと桜の船が遠い君の所まで、届けてくれるんだから。 「これ見て」 君は、花の形のまま落ちた桜を口にくわえてる。 「おしりの穴」 きっと、泣いた私を笑わせようとしてるんだろう。 その優しさが、やっぱり悲しくって、私の涙はまたこぼれた。 「これは、どう?」 君は桜の花びらを、両目の下につけてる。 「桜色の涙」 そう言って、両目をあちこちに動かしておどける。 キーホルダーのパンダのように。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加