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コツコツとノックをして少し待つと、薄く扉が開かれた。
「入ってもいい?」
たずねると、片方だけ頬を引き上げ微かに笑って扉を大きく開いてくれた。
瀬尾さんの部屋にはなにもない。
1DKの部屋の中を見渡して目につくのは、元々備え付けられた家具と家電と調理器具。彼の私物は少しの洋服と何冊かの文庫本くらい。
あとは、壁に貼られたレターラックの中に無造作に入れられたままの一通の封筒。
寒々しいほどがらりとした部屋に、薄い桜色の封筒はなぜかすごく不釣り合いな気がして、それを見るたびに僕は少し不安になる。
「宿題?」
そうたずねられ頷く。
持っていたノートと教科書をローテーブルに広げながら、台所に置かれた一人分の食器を眺める。
このがらんとした部屋で、ひとりで食事をしていたのか。
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