アズキナシ

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  「どうせもうすぐ姉ちゃんと結婚するんだから、瀬尾さんも母屋に住めばいいのに」 「まぁ、そうなんだけど。一応入籍するまではケジメをつけようかなと思って」 「とか言って、じいちゃんがこわいから一緒に住みたくないんじゃないの?」 「確かにオーナーはこわいけどね」 僕の嫌味にちらりとこちらに視線を投げて、共犯めいた笑みを浮かべる。 陽に焼けた肌。笑うとシワの寄る目尻。逞しい肩に筋ばった腕。 同じ人間で同じ男なのに、自分とはまるで違う生き物。 「勉強しないの?」 ぼんやりしているとそう声をかけられた。 慌てて視線を手元に落とす。
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